エラスチンの減少

血管のエラスチンは50歳で半減し、血管が衰えて高血圧・動脈硬化・心筋梗塞など万病を招く。


■エラスチンは20代を境に減少する一方

エラスチンは、血管や人体に特に多く含まれ、その柔軟性や弾力性の元となっている極めて重要な成分ですが、 残念ながら、年とともに減少することが明らかになっています。 エラスチンは、幼少期までは体内で作られますが、その後は新たに作られることはほとんどないと考えられています。 そのため、20歳を過ぎてからは、エラスチンは減少する一方で、50歳までには最盛期の半分ほどに減ってしまうといわれています。 20代を境に肌から弾力が失われるのも、関節や筋肉が硬くなっていくのも、そして、動脈硬化が進んで血圧が年々高くなるのも、 その背景にはエラスチンの減少があるのです。

エラスチンが、年とともに減少する理由については、まだ全貌が解明されていません。 おそらく、ゴムやバネのような性質を持つエラスチンが、長い年月の間に伸び縮みを繰り返すうちに疲弊して、 断裂を起こして失われるのが一因ではないかと考えられます。 まさに、長期間使い続けたゴムやバネが劣化してしまい、切れやすくなったり、伸び縮みしなくなったりするのと似ています。

体内のエラスチンが減少するもう一つの原因としては、活性酸素(攻撃力の強い酸素)の害が挙げられます。 活性酸素といえば、細胞や組織を錆び(酸化)つかせて万病や老化の引き金にもなるとされる物質です。 活性酸素は強いストレスを感じたり、排気ガスや大気汚染物質などの化学物質が体内に入ったりすると大量に発生し、 血管や皮膚を傷つける原因となります。 それは、エラスチンも例外ではありません。活性酸素の攻撃を受けると、エラスチンも劣化して断裂を起こし、次第に減少してしまうのです。


●エラスチン不足で関節痛で肌の老化が進む

では、体内でエラスチンが減少すると、具体的にどんなことが起こるのでしょうか。 前ページで述べたとおり、エラスチンは体の部位によって含まれる量が違います。 真皮に含まれるエラスチンは1〜5%、肺では約30%ですが、構成成分の50%を占める血管では、 エラスチンの減少による変化が現れやすいものです。 血管のエラスチンが減少するとまず、血圧の上昇を招きます。 エラスチンの減少により、体の隅々に広がる末端の血管から柔軟性や弾力性が失われ、動脈硬化が起こると、 末梢血管での血液の流れにくさを示す「末梢血管抵抗」が増大します。 すると、心臓はより強い圧力をかけて血液を送ろうとするため、血管壁が強く圧迫されて血圧が上がってしまうのです。

エラスチンの減少は動脈硬化の進行も招きます。動脈硬化が進行すれば、血管が詰まったり破れたりすることもあります。 これが心臓で起これば狭心症や心筋梗塞、脳で起これば脳出血や脳梗塞につながります。 さらに、血管からエラスチンが減少すると、毛細血管が集中する肺も悪影響を受けやすくなります。 エラスチンが不足すると、肺でのガス交換がうまく行われなくなり、その結果、息切れや咳が出やすくなるほか、 COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性的な肺疾患が起こる危険も大きくなります。 また、エラスチンが特に多く含まれている靭帯でエラスチンが減少すれば、ひざ痛や腰痛などの関節痛も招き、 肌のエラスチンが減れば、シワやタルミなどの、肌の老化が進みます。

以上のように、エラスチンの減少がさまざまな病気を招くことがおわかりいただけたでしょう。 体内のエラスチンは年齢とともに自然に減少してしまいます。 それを防ぎ、血管の柔軟性や弾力性を保つために、中高年になるとエラスチンを補う必要があると考えられています。