不整脈の薬物療法

不整脈に用いるにはナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗薬、 カリウムチャネル遮断薬、β遮断薬、代謝賦活薬、ジギタリス薬、徐脈性不整脈薬、などがあります。


■不整脈の治療に用いる薬

不整脈の薬物療法については、近年、「シシリアン・ガンビット」という新しい考え方が国際的に示され、 日本のガイドラインもそれに基づいた薬の選択を推奨しています。 抗不整脈にはさまざまな作用の薬があり、特性を把握して使い分けるために、 従来、薬の「主作用」で分けた分類が広く使われてきました。 しかし、一つの薬には主作用の他にもさまざまな作用があります。 それらも含めて患者に合う薬を選択するために、シシリアン・ガンビットでは、基本的な薬のさまざまな作用を 一覧表の形で示し、特性を総合的に把握できるようにしています。

従来、こうした薬の選択は医師の経験的な判断によって行なわれていましたが、新しい考え方では、 不整脈が起きている仕組みから、治療の”標的”を絞り、そこに作用する薬を選ぶという方法を提唱しています。 これは、個々の患者にとって最も有効な薬を、より客観的な基準で、効率よく選び出すことを目的としています。 さらに、不整脈を起こしている大本にも目を向け、基盤にある因子も併せて改善を図る治療が目指されています。 そうした点も含めて、使う薬が検討されます。
以下は、不整脈の治療に使われる薬を主な作用別に分類したものです。



■ナトリウムチャネル遮断薬

【作用】
心臓の筋肉(心筋)の細胞膜には、電気刺激の発生や伝導にかかわるナトリウム、カルシウム、カリウムなどの イオンが通るチャネル(経路)があります。このうち、ナトリウムチャネルの働きを抑えると、 拍動を起こす電気刺激が伝わるのが遅くなります。 主にナトリウムチャネル遮断作用を持つ薬には、「プロカインアミド」「ジソピラミド」「キニジン」「プロパフェノン」 「アプリンジン」「シベンゾリン」「ピルメノール」「フレカイニド」「ピルジカイニド」「リドカイン(注射薬)」 「メキシレチン」などがあります。
これらの薬は抗不整脈薬の中心となるもので、発作性上室頻拍や心房細動をはじめとする多くの頻脈性不整脈や、 期外収縮に用いられます。ジソピラミド、シベンゾリン、ピルメノールなどは、カリウムチャネル遮断作用も併せ持っています。
【副作用】
心機能を抑制して心不全を誘発したり、まれですが、心室頻拍や房室ブロックなどの不整脈を引き起こすことがあります。 ジソピラミドなどのムスカリン受容体への作用を持つ薬では、のどの乾き、排尿障害、便秘、緑内障の悪化などの 副作用が現れることもあります。

■カルシウム拮抗薬

【作用】
主に、心筋の細胞膜にあるカルシウムチャネルを遮断する薬で、血管を拡張させる作用を持つことから、 高血圧や狭心症の治療に広く用いられています。抗不整脈薬としては、「ベプリジル」「ベラパミル」 「ジルチアゼム」などが用いられます。洞結節や房室結節に働きかけて電気刺激の発生や伝わる回数を減らすことで、 心室の拍動数を減らす効果があります。ベラパミルとジルチアゼムは、発作性上室性頻拍に対してよく用いられます。 ベプリジルは、カリウムチャネルやナトリウムチャネルの遮断作用を併せ持ち、特に心房細動に有効です。
【副作用】
血圧低下、動悸、頭痛、徐脈や房室ブロックなどが起こることがあります。

■カリウムチャネル遮断薬

【作用】
心筋の細胞膜のカリウムチャネルを遮断することで、不応期(心筋が興奮から覚めて再び興奮できるようになるまでも時間) を長くする薬です。電気刺激による心筋の興奮を抑制して、心室細動や心室頻拍などの不整脈を抑えます。 「ソタロール」「アミオダロン」「ニフェカラント(注射薬のみ)」という薬が、頻脈性不整脈の中でも、 主に死に至る危険性の高い不整脈に対して用いられています。ニフェカラントやアミオダロンの注射薬は、 特に救急の場で重要です。ソタロールには、β受容体遮断作用もあります。アミオダロンは、カリウムチャネルの他、 ナトリウム・カルシウムチャネル、α・β受容体のすべての遮断作用を併せ持つ薬で、 最近使われるケースが増えています。
【副作用】
効果が高い反面、副作用も強く、心室頻拍、房室ブロック、肝障害などが起こることがあります。 アミオダロンでは、間質性肺炎や甲状腺機能障害にも注意が必要です。