カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬は、現在日本で最も多く使われている降圧薬です。 カルシウムが血管を収縮させるのを抑えて、血圧を下げる薬です。 降圧効果が高く、副作用も比較的少ないため、合併症のない人から狭心症や心筋梗塞、 脳卒中を起こしたことのある人まで多くの人に広く使用されています。


■カルシウム拮抗薬の作用

カルシウムが血管の細胞に入るのを防いで血圧を下げる

血圧を調節する仕組みの一つに、血管壁の働きがあります。自律神経の働きにより、血管壁の中膜を構成する 「平滑筋」という筋肉が収縮・拡張することで、末梢血管抵抗が変動し、血圧が調節されています。 この平滑筋の収縮・拡張に関係しているのが「カルシウムイオン」です。 ごく微量のカルシウムイオンが平滑筋細胞の中に入ると、平滑筋細胞の集まりである血管壁の中膜が収縮し、血圧が上がります。 カルシウムは、平滑筋細胞の表面にある「イオンチャンネル」を通って、細胞内に入ります。 食塩摂取量の多い人や、食塩の影響で血圧が上がりやすい体質の人は、平滑筋細胞内のナトリウムの濃度が高くなります。 そのため、増えすぎたナトリウムを細胞の外に汲み出す際に、ナトリウムと交換に、カルシウムが細胞の中に入り込みやすくなり、 血圧が上昇するのです。

カルシウム拮抗薬は、このイオンチャンネルに働きかけて、カルシウムが平滑筋細胞に入り込むのを抑制し、 血管の収縮を抑えて、血圧を下げます。また、脳や冠動脈、腎臓などの血流を増やす作用もあります。 カルシウムが細胞に入りにくくなると、骨に影響を与え、骨粗鬆症などを招くのではないかと心配する人がいるかもしれません。 しかし、筋肉と骨では、細胞がカルシウムを取り込む仕組みが違うため、そのことで骨粗鬆症になる心配はありません。

●カルシウム拮抗薬の働き


カルシウム拮抗薬には、腎臓の血流全体を増やし、特に「糸球体」内の血圧を下げる作用を持つタイプがあります。 これは、たんぱく尿を減少させるのに効果的です。 通常、降圧薬によって血圧を下げると、脳などの器官への血流を維持するために、反射的に”心拍数を増やせ”という指令が出て、 心臓の働き(心拍)が速くなります。カルシウム拮抗薬には、この作用を抑え、心拍数の増加を防ぐタイプもあります。 また、一部のカルシウム拮抗薬は、心臓の筋肉の細胞に作用して、心臓の収縮力をわずかに弱めますが、 この作用は「心不全」の人以外では、特に問題になりません。
このように、カルシウム拮抗薬は、タイプによって作用に特徴があり、患者さんの病状に応じて選択されます。


■使われ方と副作用

降圧効果が高く、さまざまな人に幅広くつかわれる

カルシウム拮抗薬は、現在日本で最もよく使われている降圧薬で、いろいろなタイプの高血圧に降圧効果があり、 特に高齢者の場合、多くの人にまずこの薬が用いられています。 その理由として挙げられるのが、高い降圧効果です。8割以上の人に、十分な降圧効果のあることが認められています。 どのような人にも幅広く使える点も、この薬が多く使われる理由の一つです。 カルシウム拮抗薬は、もともと狭心症の薬として開発されたものなので、狭心症のある人や、 過去に心筋梗塞を起こした人に適しています。脳や腎臓などの血流を改善する効果もあるため、 脳卒中を起こしたことのある人や、腎臓病や高脂血症、糖尿病のある人も使えます。
しかも、カルシウム拮抗薬には、動脈硬化の進行を抑える作用があります。 高血圧症の治療の目的は、脳動脈や冠動脈、腎動脈などの動脈硬化の進行を防ぎ、合併症を予防することです。 その意味でも、カルシウム拮抗薬は大変有効な薬です。
なお、妊娠5ヶ月以内の女性では、使用を避けたほうがよいとされています。

●主な薬

多くの薬がありますが、最近では「ベシル酸アムロジビン」「アゼルニジビン」 「塩酸エホニジビン」「シルニジビン」など、ゆっくり血圧を下げて効果が長く続く 長時間作用型の薬が主流になっています。